句の情景と韻律がマッチしているのだ。
句の内容としては、かたつむりがいて、雨に濡れる山国がある。
「かたつむり」の近景から「甲斐」や「信濃」の山並みの遠景へのズームアウトのあざやかさ。
もちろんそれも確かな味わいとして現前するのだが、
この韻律、音に、読者を捉えて離さない魅力がある。
「ka」音の多用、「も」のリズムなどと、分析していくこともできるが、
この言葉たちの出会いの偶然性かつ必然性を前に、
いつしか読者は、ただただこの句を口に出せる喜びを噛みしめるのだ。
廣瀬直人編『山のこゑ』(ふらんす堂、2010)より。