夕蟬や引けばラップの突如尽く   野崎海芋

たかがラップ、されどラップ。喪失感がすさまじい。
短いラップの透明感と、ただ空回りするだけの芯棒、乾いてゆく料理。
この喪失感は、句の文体がさらに盛り上げている。
調子良く引っ張っていたことが分かるだけに、青天の霹靂のように「突如尽く」がよく響く。
「夕蟬」もかなしくて、茫然としてしまう。

『澤 8月号』(澤俳句会、2011)より。