いづくへも光ゆづらず返り花   矢部白茅

冬の陽の当たる暖かなところに咲き誇る「返り花」。
寒々しい景色に、あざやかな花の色が、より輝いて見えるのだろう。
「ゆづらず」という主観的な把握が面白い。
花の生命力と、光の強さを感じさせつつも、丁寧な仕上がりの一句となっている。

飯田龍太著『現代俳句歳時記』(新潮社、1993)より。