山茶花のさざんくわと咲きこぼれたる   川崎展宏

「山茶花」をただ旧かなで「さざんくわ」と書いただけなのに、擬音のようだ。
他の花ではなかなかこのようにはならないだろう。
山茶花の真っ赤な花の色と静かな緑の葉の色、花の落ちた先の土の色がありありと見えてくる。
そして、冷たい木枯も感じられるのは、「さざんくわ」の音の揺れのせいだろう。
口ずさみたくなる楽しい句である。

『冬』(ふらんす堂、2003)より。