夏帽や砂といふ砂風に自由   野口る理

茶筒の絵合はせてをりぬ夏休み〉〈夏座敷招かれたかどうか不安〉に続いて同じく「夏」のつく「夏帽」の句。

 砂丘のような大景、あるいは砂浜でも良いだろう。砂紋や、丈の短いカーテンのように吹かれ流される砂風、あるいは砂つむじなどを見ている。「夏帽」という一点に対して、遠くまで吹き抜ける風を配し、「夏帽」という人に属する、生命感あるものに対して「砂」という命なきものを配した。的確な一句。

「眠くなる」(『俳コレ』邑書林、2011)より。