かしぎつつヨットの向きの定まれる   西村和子

きらきらと陽射しを照り返す夏の海にヨットが浮かぶ気持ち良さ。
すいっと向きが定まるのではなく、「かしぎつつ」というたしかな描写によって句がグッとしまる。
切れのない文体、「定まれる」という終わり方に、これから広がる大きな海が見えてくるようだ。
単なる写生にとどまらず、ヨットのまぶしい行方を思い希望が感じられる一句。

『セレクション俳人 西村和子集』(邑書林、2004)より。