鵙の野に鉄塔エレキ通はする   川端茅舎

キチキチキチキチと機械音のような声で鳴く「鵙」。
そんな鵙たちがいる野にひっそりと立ち上がる「鉄塔」の静かさが際立つ。
電気、や、電流、では全然だめだ。「エレキ」という言葉だからこそ、この句がいきいきしてくる。
無機質な鉄塔や電線を見上げながら、中をめまぐるしく電流が通っていることに思いを馳せる人。
乾きはじめた秋の風が鉄塔を吹き抜けていく気持ち良さと寂しさが混在するような句。

岸本尚毅著『虚子選ホトトギス雑詠選集100句鑑賞[秋]』(ふらんす堂、2011)より。