人づてなれど噛む神出づる野の消息   高柳重信

「噛む神」とはどんな神だろうか。
と考える時点で、神は人間のような姿をしていると思い込んでいることに気付く。
獣や虫、はたまた人間には想像できないなにか、が神である可能性も当然ある。
そして、人間だっていろいろ噛むのだ。噛むということ自体は特に不思議なことではないはずだ。
それにしても「噛む神」とはインパクトがある。畳み掛ける韻律も面白い。
「人づて」に聞いただけであるというところも、いろいろ想像が膨らんでなおさら謎が深まる。
そんな神の消息ではなく、そんな神が出る「野」の消息が気になっているひと。
急に「野」への思い入れが現れるところが人間の心理としてリアルで胸にぐっと迫るものがある。

「山川蟬夫句集」(『高柳重信読本』角川学芸出版、2009)より。