俳句甲子園最終日の会場は、前日の商店街・大街道から、松山市コミュニティセンターのホールへ。エントランスには、前日の試合で使われた、大きな短冊が、ところせましと飾られている。
「両の手にうちわ二枚で飛んでみる (就実高校)」
オープニング。これから準決勝・決勝をたたかう前日の勝者、3チームが紹介。スポットライトがまぶしい。
続いて、これから敗者復活戦を戦う、33チームの代表が、プラカードをもって登壇。
ずらりと並ぶ、13人の審査員。敗者復活戦では、33チームの作った「西瓜」の一句を、順番に評価していく。チームの代表2人が登壇、自分たちの句を詠み上げると、審査員が彼らの句に対する質問をし、高校生がそれに答える。質疑応答の時間制限は一分間。審査員は、作品点10点満点と、受け答えのディベート点3点満点で、得点をつける。13人の審査員の得点の集計をして、一番得点の高かったチームが、敗者復活戦の勝者となる。
岩手県立水沢高校。福井蒼平くんは、お姉さんも俳句甲子園出場者。丁寧で誠実な受け答え。
岡山、就実高校は、西瓜を持参してパフォーマンス。
見守る観客。
宮城県の小牛田農林高校。「なってやる西瓜の蔓の支え木に」。
沿岸部の被災地でボランティア活動をしたことと、ふだんから西瓜をはじめとして農作物を学校で作っている経験から、自分の思いをつむいだ。「なってやる」の第一声の強さがたのもしい。
次は、初出場の東京、吉祥女子高校。
「西瓜抱えて土星の輪となる腕」
わたしが西瓜に寄せるいつくしみが、土星と土星の輪との関係のあいだにも、発生しているようで、愛のある句。
句は、会場上方の画面に映し出される。
見事、敗者復活戦を勝ち抜いたのは、開成高校Aチーム。
審査員の西村和子さんから発表。「シラスナノ・・・」と句が読み上げられた瞬間、「うちではなかった」という深いため息の渦の中で、開成高校のあたりから、歓声があがる。やはり、句がよかったという評価。
「白砂に据ゑて西瓜はみづの星」
嬉しくて泣くメンバーたち。
そして、ついに、準決勝・決勝の試合がはじまる。
決勝の勝敗を決めた句。
優勝は、開成高校Aチーム。決まった瞬間。
表彰式。
団体戦の勝者に加えて、個人賞(作品一句一句に贈られる賞)の発表がある。
個人賞は、俳句甲子園に提出されたすべての俳句から、13人の審査員が合議で決める。
負けたチームも、みな、最後のこの瞬間に名前が呼ばれることを、ひそかに期待している。
優勝は開成高校Aチーム。開成高校のみんなで、優勝記念の一枚。
大会・個人最優秀句。
未来もう来ているのかも蝸牛 菅千華子
(厚木東高校Bチーム)
ほんとうに、ここが、かつて信じられていた輝かしい未来なのだろうか。
未来・現在というものの手ごたえがないのかもしれない。
それでも、かたつむりのように、愚直に、透き通って、生きていく。
この句には、いまの、この時代を生きる、絶望からのあかるさがある。
今という瞬間は、つねに、いつかの未来なのだ。しかし、圧倒的に、今である。
このあと、生徒たちは、宿泊先の奥道後ホテルへ移動し、OBOG主催のフェアウェルパーティーへ。
戦いを終えて、互いに交流する時間をすごした。
(「俳句甲子園観戦記」終 神野紗希・記)
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