2017年11月17日

妖精になりたし春の日に親し

着ぐるみを着るアルバイトをやったことがある。
私の着ぐるみは、花の妖精を模したものだった。
頭の上に大きな花が咲いていて、女の子のような姿をしていた。
バイト先の雇い主は私に「妖精の動きだからね」と念を押した。
残念ながら、私は実物の妖精を見たことがない。
漫画やアニメで見たようなイメージはあるが、一口に妖精と言ってもいろいろな姿や形、動きがある。
一般的な妖精とはどのような動きをするものなのだろうか。

冬帝先ず日をなげかけて駒ケ岳 高浜虚子『五百句』

名前はあるものの、実態が定まっていないものは多い。
季語で言う「冬帝」や「佐保姫」等も実物がない。
「ふるさと」や「おふくろの味」は人それぞれ違う。

フラワーマンの息子は寝冷えするフラワー 田島健一 スピカ「ツィンバルカの下唇を侮ってはならない」

でも、不思議と何となく「こんなかな?」と想像してしまう。
プラトン哲学のイデア論のような感じである。

生まれし日の記憶どこにもなく泳ぐ 永山 智『第17回俳句甲子園公式作品集』

確固たるものがどこにもないはずの記憶やイメージ。でもどういうわけか、何かわかる、感じるものがあって、我々は想像したり行為に表したりしてしまう。不思議である。
とりあえず、私はあまり大きな動きはせず、なるべくかわいらしく手を振ることにした。
子供達はそれなりに喜んでくれたようで、一緒に写真撮影もしてくれた。
以来、私は着ぐるみを見る度に「妖精」について考える。
本物の妖精はどんな動きをするんだろうか。
見たことがある人、今度教えてください。