楢山 女子会の様相を呈してきました。
西丘 ふだん、hi→で集まるときは、うなぎ屋とかだもんね。
神野 でも、私たちもそんなかんじですよ。今日は、女子会を体験しよう、というコンセプトで。恋バナとかする?(笑)
楢山 そういえば、る理さん、twitterで見たんですけど、お誕生日に、匿名でバースデーケーキが届いたって。
野口 そう!ケーキ屋さんから、「お届け物です」って、ホールケーキが届いて。
神野 誰からのプレゼントか分かったの?
野口 まだ分からないんです。
西丘 ええー!
神野 あしながおじさん的な?
野口 どなたなんだろう。
神野 匿名のお菓子といえば、私、小学校四年生のときに、好きだった男の子にはじめてチョコレートつくったんですよ。でも、手渡すタイミングがつかめなくて、帰り道もチャンスを狙って、ついて帰ったんですけど・・・ストーカーですね。結局わたせなかったので、おうちのポストに投函して帰りました。でも、よくよく考えたら、手渡しするつもりだったので、手紙とかいれてなくて、私からということが、伝わらないなって。
野口 じゃあ、分からずじまい。もしかして、お父さん宛てだと間違われて、家庭内不和の原因になったかもね(笑)
神野 チョコレートですが、苦い思い出です。
西丘 バレンタインデーのチョコ、作ったことある?
楢山 作ったことないですね。皆無です。
神野 あげたことは?
楢山 ないです。幼稚園のとき、男の子と警備員さんに、飴を配ったことはありましたけど。そのあとは、女子大の付属の小学校と、中高一貫の女子校に通ってたので、クラスメイトはほとんど女子で。だから、恋バナの習慣もなかったです。
野口 小中学校のとき、友チョコってはやらなかった?友達同士で、チョコレート作ってきて交換するっていう。
楢山 あー、そういう華やかなりし集団にはいなかったです。
西丘 やってそうだよ(笑)
楢山 中学校のとき、憧れの女の先輩にあげる子とか、いましたけどね。
神野 へー。憧れの先輩っていわれる人って、やっぱり男っぽい人なの?
楢山 そうです。かっこいいし、短髪だし。友達にもそういう子がいたんですけど、その子は、後輩からもらったチョコを「こんなにいらない、みんなで食べて」って。で、「チョコくれた子、泣いちゃうよ~?」とか、みんなではやしたてながら、チョコ食べるっていう。
野口 へえ(笑)
楢山 その子は「だってここ、女子校だぞ?」とか言いながら。
野口 その台詞がすでにかっこいい。
卒業式犬連れてっていいですか 碍子
(雑誌『日経ビジネス Associe 2011年 4/19号』)
神野 ・・・「駄目っ!」ってつっこまれそうだよね(笑)
楢山 はい(笑)この場に持ってきていいのかな、と思ったんですが、この句は、twitterで発信されたりしている、千野帽子さんと堀本裕樹さんが日経オンラインで連載している・・・
野口 飛びこめ!かわずくん。
楢山 そうです。その俳句講座「飛びこめ!かわずくん」の、第一回目で千野さんが特選に選んだ俳句です。「日経ビジネスアソシエ」の2011年4月19日号に載ってます。
西丘 作者が女性か男性かも分からない。
楢山 そうです。
神野 そもそも。
野口 選ばれる常連だったりするのかな。
楢山 この人は結構選ばれてるみたいです。私自身、俳句って面白いなって思い始めた時期に、ちょうどこの連載が始まって、「ああ、こういうのもアリなのかな」って思いました。この句、口語で言いきっちゃってるのがすごくいいなあ、と。すごく不安な感じがするのも好きです。卒業式に犬を連れてっていいはずがないんですけど(笑)それを聞いちゃうってことは、この人はその判断すらつかないの?っていう(笑)
神野 たしかに(笑)
楢山 たぶん、これは生徒側なんですよね。自分の卒業式に、犬を連れて行ってもいいですか?と聞いている、この不穏な感じ。私はこれ、高校生の卒業式じゃないかなと思います。自分で判断はできる程度の年齢だけど、大学生ほどは大人じゃない。自分の高校の卒業式を思い出すと、みんな制服のブラウスを着てるのに、ブラウスをスカートにいれてない子もいたし、みんな立たなきゃいけないのに、立ってない子っていたな、と。今、中学・高校で非常勤講師として働いてるんですけど、合唱コンクールで、みんなそろって練習しなきゃいけないときに、ふらあっといなくなっちゃう子って、いつの時代もいるんですよね。そういう、はみだしちゃう子に対して「ダメだよ」って思うんだけど、ちょっと憧れちゃう気持ち、っていうのを思い出しました。
野口 うんうん。
楢山 この犬は、リードがついてるんですよ。で、たぶんなんですけど、純血種じゃない気がしていて。なんとなく、雑種で、毛がぼわぼわしていて、くさい。けどかわいい(笑)
神野 くさい(笑)
楢山 くさいのがかわいい、みたいな(笑)
神野 これ、もう、犬、連れてきてるくらいの勢いだよね、むしろ。犬連れてきて、校門のところで、「いいですか」って聞いてるくらいの、いまさら感だといいな。「連れてきましたけど、いいですか」くらいの強引感。伊吹ちゃんは、この句、どうですか。初めて見ましたか。
西丘 完全に初めてです(笑)ふつうに読むと、ふざけてるのかな、って思ってしまうけど、だんだん、そうでもないのかなってことが分かってきます。こういうことを言ってみて、大人の気をひきたい年頃の学生って感じもする。なんかさみしい句ですよね。
神野 卒業式って、基本的に、成長しました、ひとりだちします、って式じゃない?これで、私は大人になりました、っていうところに、「犬連れてっていいですか」って、全然、成長してないじゃん、っていう。全然ダメじゃん感。
楢山 そこが怖くていいなって。
神野 ホラーだよね、すでに。
楢山 「ダメに決まってるでしょう!」っていうところを・・・
神野 乗り越えて。でも、今だと、リアルだよね。リアルにいそう、こういう子。生活の比重が、99パーセント犬に置かれてる、みたいな。芸能人の犬の愛し方、みたいな。おそるおそる聞いてきてる、というよりは、むしろ、悪気ないくらいのかんじで、意味をとりたいですね。
西丘 ちょっと依存してる感じだよね。卒業式なのに、犬から離れられない。それとも、あえてその質問をしちゃうっていう危うさなのかな。
野口 私は、この句、ツッコミ待ちな感じがしちゃって、そこまで優しく読んであげられないっていうか。「ダメ!」っていうみんなのツッコミを待ってるような、かまって欲しい感が出過ぎてるような感じがするのかな。
西丘 幼い感じ・・・
野口 幼い、というより、「面白いでしょ?」って言われてるような。
楢山 「連れてっていいですか」っていうのは、「連れていっていいですか」ってことだから、家から電話してる感じがします。
神野 なるほど。
楢山 学校の先生をやっている身としては「ダメだよ」って頭ごなしに言うんじゃなくて、「ああー、そういうこともあるけど、でも、こういうことでダメなんだよ」って言ってあげたい、というか。はみだしちゃった感覚ってのもダメなんだけど、でも、「あるよね」って言ってあげたい気持ちはあります。
西丘 先生目線。
(次週は、西丘伊吹の推薦句をよみあいます。)