君それは虹見るまなこ波聞く耳   神野紗希

なんて素敵な〈君〉だろう。〈君それは〉という賛辞をはらむはじまりに、愛があふれている。
〈まなこ〉と〈耳〉であると定義された〈君〉。
美しい〈虹〉や〈波〉は、消えてしまうデリケートさとまた現れるタフさをも持ち合わせる存在。
そのような存在へ開かれている〈君〉に、私はどんなふうに映るのだろうか。

生まれたばかりの子への句と読むと、さらにまぶしい。
まだ首も座らない小さなこの子が世界と出会おうとするための〈まなこ〉や〈耳〉の清らかさ。
世界は光に満ちていると信じ、信じ続けたいからこそ、そして読者にも信じさせたいからこそ、
紗希は言葉を費やしてゆく。

「君それは」(2017.4)より。